沈青教授、硫化鉛量子ドット太陽電池の世界最高性能を達成

沈青教授のグループが、界面制御により硫化鉛量子ドット太陽電池の変換効率15.45%(世界最高性能)を実現しました。

【電気電気通信大学ニュースリリース 】

https://www.uec.ac.jp/news/announcement/2022/20221019_4877.html


この研究内容は、Advanced Energy Materials に掲載されました。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/aenm.202201676

DOI 10.1002/aenm.202201676


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■ポイント

*界面制御により硫化鉛量子ドット太陽電池の変換効率15.45%を実現(世界最高性能)

*3つの界面のパッシベーション方法を開発し、相乗効果を確認

*量子ドット太陽電池中の無輻射再結合により損失を低減

*光励起電荷キャリア抽出のバランスを向上


■概要

沈青教授(基盤理工学専攻)らの研究グループは、硫化鉛を用いた量子ドット太陽電池を開発し、界面を制御することで硫化鉛量子ドット太陽電池として世界最高性能となる15.45%のエネルギー変換効率を達成しました。次世代太陽電池の一つの候補である量子ドット太陽電池の変換効率を向上する際のボトルネックは、界面における欠陥と光励起キャリア(電子と正孔)抽出の不均衡による無輻射再結合であることが分かっています。

本研究では、硫化鉛量子ドット太陽電池の3つの界面のパッシベーション方法を開発し、その相乗効果によって無輻射再結合による損失を低減し、さらに光励起電荷キャリア抽出のバランスを改善できることを示しました。これにより、世界最高性能の硫化鉛量子ドット太陽電池が実現できました。

今回提案した3つの界面のパッシベーション方法は、量子ドット太陽電池の変換効率を向上させるだけでなく、他のヘテロ接合太陽電池や発光ダイオード(LED)にも応用可能であり、今後、高性能な光電変換デバイスへの展開が期待されます。

本成果はエネルギー材料分野の国際科学誌「Advanced Energy Materials」に掲載されました。


■背景

次世代の量子ドット太陽電池の有望な材料として、溶液法で作製した硫化鉛コロイド量子ドットが注目されています。硫化鉛コロイド量子ドットはサイズの変化によって光吸収領域を制御でき、さらに高い吸収係数を有することや、多重励起子生成(MEG)が可能であるなど優れた特性を持っています。

典型的な硫化鉛量子ドット太陽電池は、厚さ数百ナノメートル(ナノは10億分の1)の n型量子ドット層(光吸収層)が、電子輸送層と正孔輸送層の間に挟まれています。量子ドット中で光生成されたキャリアは、量子ドット光吸収層、電子輸送層、正孔輸送層、および2つの電極の間のあらゆる界面を含む輸送経路を通って移動します。これらの機能層と界面における欠陥によって光生成キャリアの無輻射再結合が発生するため、電極により電荷が抽出される前に電子と正孔の損失が起こります。

一方、量子ドット光吸収層での電子(多数キャリア)と正孔(少数キャリア)の輸送速度の大きな違いにより、電子輸送層/量子ドットと量子ドット/正孔輸送層の界面において電荷蓄積が起こりやすくなります。これにより、デバイスの直列抵抗の増加と並列抵抗の低減が起こり、光電変換効率が低くなります。しかし、これまでの大半の研究では、硫化鉛量子ドット太陽電池の単一界面のみに対してパッシベーション方法を用いていたため、界面欠陥による無輻射再結合の抑制とバランスのよい電子と正孔の抽出を同時に実現することは困難でした。


■手法

沈青教授らは、硫化鉛量子ドット太陽電池の3つの界面、すなわち量子ドット/量子ドット界面、電子輸送層/量子ドット界面、および量子ドット/正孔輸送層界面のパッシベーションの相乗効果を利用できる新しい界面エンジニアリングを提案しました。

まず、量子ドット/量子ドット界面にペロブスカイト界面層を形成する新しいパッシベーション方法により、量子ドット光吸収層での欠陥密度の低減と光励起キャリア寿命、さらに拡散長を増加させます。量子ドットインク中に適量のホルムアミジンヨウ化水素酸塩を添加することにより、スピンコートで作製した量子ドット膜内の隣接する量子ドットの間にペロブスカイト層が形成されます。透過型電子顕微鏡像により、量子ドットの表面にペロブスカイト単分子層が形成され、それによって量子ドットがほぼすべての(200)結晶面に沿って互いに架橋していることが分かりました。

これにより、量子ドット膜の欠陥濃度が40%減少するとともに、キャリア移動度が大幅に向上し、量子ドット膜内の光生成キャリアの拡散距離が1.7倍に増加しました。その結果、量子ドットの光吸収層の厚さが11%増加し、デバイスの変換効率は13%以上になりました。本提案方法により、量子ドット表面に単層ペロブスカイトのシェルが簡便に形成され、量子ドット膜のキャリア移動度の増加と量子ドット界面欠陥の低減が確認できました。

次に、電子輸送層/量子ドット界面の保護膜として、厚さ約10ナノメートルのPMMA(アクリル樹脂)とフラーレンの誘導体であるPCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル)の混合層を導入し、電子輸送層のダメージを防ぐとともに、界面での欠陥密度を低減するなどの電子輸送層/量子ドット界面のパッシベーションを行いました。

さらに、電子と正孔をバランスを取りながら抽出し、量子ドット/正孔輸送層の界面での欠陥を低減するために、n型の硫化鉛量子ドット層(光吸収層)とp型の硫化鉛量子ドット層(正孔輸送層)の間に、正孔輸送性を持つPMMAと酸化グラフェンの混合膜を導入しました。これにより、正孔移動度が著しく向上し、量子ドット/正孔輸送層の界面での正孔の抽出効率が高まり、電子と正孔の輸送と収集のバランスが向上しました。

これらの3つの界面エンジニアリングにより、15.45%の変換効率が達成できました。これは今まで報告された単一接合の硫化鉛量子ドット太陽電池の中での最高値です。